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貸倒損失を損金の額に算入するための基準

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貸倒損失を損金の額に算入するための基準

最判平成16年12月24日は次のように判示している。

(1)法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることを要すると解される。そして,その全額が回収不能であることは客観的に明らかでなければならないが,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に必要な労力,債権額と取立費用との比較衡量,債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情,経済的環境等も踏まえ,社会通念に従って総合的に判断されるべきものである。

(2)これを本件債権についてみると,前記事実関係によれば,次のとおりである。
 ア 母体5社は,平成7年9月にA社を整理する方針を確認したところ,その後の農協系統金融機関との協議において,農協系統金融機関が,その元本損失部分についても母体行が責任を持つ完全母体行責任による処理を求めたのに対し,B銀は,その貸出金全額の放棄を限度とする修正母体行責任を主張し,債権額に応じた損失の平等負担を主張することはなかった。
 イ その背景として,B銀は,A社の設立に関与し,独禁法で許容される上限まで株式を保有し,役員及び職員を派遣し,多額の融資を行うなどして,その経営に深くかかわっていたという事情があった。そして,同4年に策定された第1次再建計画によってはA社の経営再建ができなくなり,同5年に本件新事業計画が策定されるに至ったが,農協系統金融機関が融資残高の維持及び金利の減免を内容とする同計画に応じたのは,母体行が責任を持って再建計画に対応することが明確にされたからであった。そうすると,B銀は,本件新事業計画を達成することができなかったことにつき,農協系統金融機関から信義則上の責任を追及されかねない立場にあったということができる。
 ウ 本件新事業計画は,A社の再建を前提としたものであって,その破綻後の整理を前提としたものではないものの,A社の余裕資金による返済順序の第2順位が母体ニューマネー,第4順位が農協系統金融機関の債権とされ,母体行の従前からの債権がそれらに劣後するという内容であったところ,B銀は,A社の整理が避け難い情勢になった後においても,A社から母体ニューマネーを回収していた。したがって,農協系統金融機関が完全母体行責任を主張することには無理からぬ面があり,B銀も,上記のような経緯を考慮して,修正母体行責任が限度であると主張して,本件債権の放棄以上の責任を回避しようとしていたものということができる。
 エ 母体5社は,本件閣議決定及び本件閣議了解で示された住専処理計画に沿ってA社の処理計画を策定し,同計画において,B銀は,本件債権を全額放棄すること,すなわち,本件債権を非母体金融機関の債権に劣後する扱いとすることを公にしたということができる。前記のとおり,B銀においてせいぜい修正母体行責任しか主張することができない情勢にあったことをも考慮すると,仮に住専処理法及び住専処理に係る公的資金を盛り込んだ予算が成立しなかった場合に,B銀が,社会的批判や機関投資家としてB銀の金融債を引受ける立場にある農協系統金融機関の反発に伴う経営的損失を覚悟してまで,非母体金融機関に対し,改めて債権額に応じた損失の平等負担を主張することができたとは,社会通念上想定し難い。
 オ 前記のA社の処理計画において,A社の正常資産及び不良資産のうち回収が見込まれるものの合計額は,非母体金融機関の債権合計1兆9197億円を下回る1兆2103億円とされたが,この回収見込額の評価は,本件閣議決定及び本件閣議了解で示された公的資金の導入を前提とする住専処理計画を踏まえたものであるから,破産法等に基づく処理を余儀なくされた場合には,当時の不動産市況等からすると,A社の資産からの回収見込額が上記金額を下回ることはあっても,これを超えることは考え難い。
(3)以上によれば,B銀が本件債権について非母体金融機関に対して債権額に応じた損失の平等負担を主張することは,それが前記債権譲渡担保契約に係る被担保債権に含まれているかどうかを問わず,平成8年3月末までの間に社会通念上不可能となっており,当時のA社の資産等の状況からすると,本件債権の全額が回収不能であることは客観的に明らかとなっていたというべきである。そして,このことは,本件債権の放棄が解除条件付きでされたことによって左右されるものではない。